PressRoom.jpプレスルーム記者放談080104

静かになった新聞社編集局

記者放談

08.1.4

 かつて新聞社の編集局といえば、大部屋で電話のベルが鳴り響く中、誰かが大声を出し、記者たちはそこかしこで議論し合い、怒鳴り合いも珍しくないという極めて騒々しく、うるさい職場だった。コンピュータ化、ネットワークされた今、どんな様子になっているのだろうか。セキュリティーが強化され、社内関係者しか立ち入ることができなくなった新聞社編集局。変り行く雰囲気を、全国紙のデスク、別の全国紙の中堅記者、元記者らが語り合った。

[参加者]
■全国紙Z・デスク
◆全国紙X・中堅記者
●フリージャーナリスト(元全国紙X・記者)

フリージャーナリスト(元全国紙X・記者)

  •  先日、総合商社を辞めてベンチャー企業を起こした男と話す機会があったんだけど、私が元新聞記者だと分かると彼は「新聞社編集局って一度訪ねたことがあるんですが、とてもうるさくて、あちこちで議論したり、中には怒鳴りあってる人もいて驚きました。商社とは全然違いました」って言ってた。そして「今でもそうなんですか」と尋ねられた。私はもう新聞社を辞めて何年も経つから「昔はそうだったんですけどね」としか答えられなかったんだけれど、実際のところ今どうなの?

全国紙Z・デスク

  •  今は、とても静かだね。10年くらい前に比べると、本当に静か過ぎるって感じかな。その元商社マンの印象とはまったく違っていると思う。そもそも怒鳴り合ってるやつなんていないから、今は。皆、黙々とパソコンに向かってるよ。インターネットとパソコンが、静かになった大きな要因かもしれないな。

全国紙X・中堅記者

  •  私は、入社して10年ちょっとですが、最初の配属先が本社だったので雰囲気に圧倒されました。その元商社マンが目撃したように、あちこちで議論してるし、怒鳴り合いも日常茶飯事。1週間に1度くらいは、胸倉をつかみ合うような喧嘩もありましたよね。私は体育会出身ですが、えらい会社に入ってしまったものだ、と感じました。でも、今はその頃が懐かしく思えるくらい、シーンとしていますね。静まり返っています。

フリー

  •  なるほど。やはり予想通りだね。新聞社の、中でも編集局というと、その元商社マンの言葉を借りるまでもなく、商社、メーカー、金融関係などの会社と違って、とにかくうるさい職場で、それが活気につながってたんだよね。

中堅記者

  •  そういう意味では活気がなくなったと言えるかもしれませんね。デスクに食ってかかるような記者がいなくなりました。だから議論も怒鳴り合いも起きません。本当にサラリーマン的に、上司の言いなり。もちろん新聞記者もサラリーマンなんですが、少し前までは、記者一人ひとりに、俺は上司であるデスクより現場を知っているんだ、という気概がありましたよね。

デスク

  •  デスクの立場からしても、記者からの建設的な意見や進言は大歓迎なんだけどね。最近はなかなか骨のある記者がいない。記者が扱いやすくなった、と思われるかもしれないけれど、実際はそうではなくて、何かの取材を頼むと、あいまいに生返事して、結局はそのまま放置することもある。議論して双方納得して、ということがない。表面的には従順を装っているものの、本音は別だったりする。

フリー

  •  そもそも議論するのは、より良い商品=紙面を作るため、という共通の大きな目的達成のため。上司と部下という職制を超えて、他社に負けない、そして読者が満足するような新聞を作るために、それぞれが意見を戦わせていたはず。今の話を聞いていると、やはり活気がなくなっている、と感じざるを得ない。

中堅記者

  •  編集局の静かさ、ということだと、取材相手から記者への連絡手段が携帯電話や電子メールになったことも要因ですね。部の電話が鳴り響く、ということはほとんどなくて、記者それぞれの携帯に電話がかかってくる。マナーモードだと他の人は気付かないし、メールなら周囲はまったく分かりません。

デスク

  •  私が現場の記者だった時は、何か調べものをする時は資料室に行ったり、その事柄を良く知る人に電話して聞いたりしていたいたけれど、今はインターネットでちょいちょいって調べられてしまう。その間、席を立つことなく、しかも終始無言。誰とも話す必要はないからね。ネットで調べることの危険性については、今ここでは言わないけど。

中堅記者

  •  細かな話ですが、以前は広辞苑とか各部に1、2冊しかなくて「広辞苑どこだー」なんてデスクが大声出したりしてましたよね。今ではインターネットか、個人の電子辞書で調べるから、無言。あと、取材に行く場所とかも、行き方を誰かに聞くこともしません。ネットですぐに分かりますからね。事件現場から電話してきて原稿を読み上げて、それを本社の記者が書き取る、なんてこともなくなりましたね。現場から携帯でメールして来ればすむことですし。

デスク

  •  会話によるコミュニケーションが減ったということかな。その結果編集局が静かになった。コミュニケーションがうまくとれないから、デスクとやり合うこともしない。そういうことになるのかな。

フリー

  •  新聞社の編集局はやはり、うるさくて活気がないといけないような気もする。それが勢いのある紙面を生み出すはずなんだけどね。時代と言ってしまえばそれまでだけど。もちろん、静かだからといって、いい紙面ができない訳ではないのだろうけれど、何となく物足りない。

中堅記者

  •  例えば今、編集局内で少しでも大きな声を出すと、皆が一斉に声の主の方を見るんですよ。少し前までは、誰も気にも留めなかったのに、今では奇異なものを見るような目で見られてしまう。そうなると、もう大声は出せない。かつては奇声を発するデスクとかもいたんですけどね。

デスク

  •  いたね、意味のない奇声を発する人。完全に絶滅したね、そういう種は。ただ心配なのは、格好いいことを言うと、デスクの言いなりになっているおとなしい記者が取材に出て、果たして権力側と正面から戦えるのか。権力側の言葉をそのまま信じてウのみにしてしまわないかと。デスクとやり合うのは、ある種、デスクという記者にとっての社内権力に対する対抗でもあるのだから。

フリー

  •  若い記者たちの線が細くなっている、ということだね。そうならないように、デスクや中堅記者には、キッチリと指導してもらいたいね。ただ、怒鳴ったり大きな声を出したりしないで記者教育をしないといけないから、簡単ではないかもしれないね。

記者放談 記事リスト

2008年

静かになった新聞社編集局(08.1.4)

新聞記者・デスク、雑誌編集者をはじめとするマスコミ関係者たちの言いたい放題の雑談を収録

サイト内検索

協賛サイト