PressRoom.jpプレスルーム引継帳の余白080125

取り付け騒ぎの記憶

引継帳の余白~全国紙デスクの日々

08.1.25

 みずほコーポレート銀行が、サブプライムローン問題で損失がふくらんだ米メルリリンチに約12億ドル(約1300億円)を出資することを決めた。メリルは約9000億円もの赤字を計上し、2007年7~9月期では赤字に転落している。出資はメリルからの要請だという――。1月16日付の各紙はそろって、こう報じている。年初からサブプライム問題の影響を懸念し、東京株式市場もほぼ一本調子で値を下げている。ただ、今のところ、巨額の赤字を出している米国の金融機関に比べ、日本の金融機関の傷は比較的浅いそうだ。そのため、日本の3メガバンクは支援を期待される立場になっている。

 金融再編も一区切りついた。公的資金も返済した。さあ、そろそろ攻めに転じよう――。金融界の雰囲気を語るなら、そういうことなのだろうが、私などは「つい先日まで、不良債権問題で青息吐息だったのに」と皮肉りたくなる。例によって、個人的な思い出を書くことを許していただきたい。

 日本が金融危機の淵に立っていたのは、ほぼ10年前の1997年秋のことだ。中でも11月26日が最大のヤマ場だったとされている。11月3日に三洋証券が会社更生法を申請し、17日には北海道拓殖銀行が経営破綻。24日には山一証券が自主廃業を決めた。そして26日、仙台の徳陽シティ銀行が経営破綻を発表する。不安感は全国に広がった。

 私は当時、経済部に所属していたが、金融担当ではなく、華々しい取材合戦を経験したわけではない。ただ、この26日、たまたま月に1度の内勤当番にあたっていて、社内の殺気だった空気に触れることになった。いつもの内勤当番はデスクを補助して、通信社電をチェックしたり、紙面の刷り上がりを点検したりすることが主な仕事で、さほど忙しくはない。だが、この日は着席するなり、様相が違っていた。

 経済部の電話がひっきりなしに鳴る。電話をとるたび、各地の支局から「○○銀行で、預金者がカネを引き出そうと列をつくっている」「××銀行に人が押し寄せている」という連絡が次々と入ってきた。

 「いま、全国で取り付け騒ぎが起きている」

 昭和初期の金融恐慌についての知識はあったが、遠い昔の話だと思っていた。取り付け騒ぎが現実に展開されているのを知った時、大げさではなく、背筋が寒くなったのを覚えている。ちなみに、この日の取り付け騒ぎは新聞やテレビでほとんど報道されていない。ヒラ部員だった私には、編集局幹部がどういう判断をしたのか、知るよしもなかったが、騒ぎを伝えることで火に油を注ぐ結果になることを恐れたのだと思う。報道協定を結んだわけでもないそうだ。

 騒ぎは夕方、当時の三塚博蔵相と松下康雄日銀総裁が共同声明を発表し、預金を全額保護するとのメッセージを伝えて、終息に向かった。ただ、恐怖感の残像は、私の目の裏にしっかり焼き付けられた。

 あれから10年。本当に、日本の金融機関は立ち直ったのだろうか。

LinkIcon中国の闇(08.2.7)

LinkIconデカ部屋(08.1.15)

引継帳の余白~全国紙デスクの日々 記事リスト

2008年

国際会議(08.8.12)
第3次石油危機(08.6.20)
成長の限界(08.6.13)
顔(08.4.22)
2人の首相(08.4.14)
石原都知事の責任(08.4.1)
花粉症と肥料(08.3.13)
橋下はん、性根見せなはれ(08.3.5)
私には夢がある(08.2.25)
芭蕉は隠密だった?(08.2.14)
中国の闇(08.2.7)
取り付け騒ぎの記憶(08.1.25)
デカ部屋(08.1.15)
政治家の病気(08.1.1)

足腰は弱り体力も落ちたけど相変わらず青臭いこと言っている。そんなオヤジ記者の日常報告。考えるきっかけを提供できれば。 [全国紙デスク]

サイト内検索

協賛サイト