PressRoom.jpプレスルーム引継帳の余白080225

私には夢がある

引継帳の余白~全国紙デスクの日々

08.2.25

 アメリカ大統領選挙の民主党候補者選びで、オバマ上院議員が快進撃を見せている。今のところ、事前に本命視されてきたクリントン上院議員を上回る代議員を獲得しており、初の黒人大統領誕生が現実味を帯びてきた。オバマ人気にあやかって、福井県小浜市の市民は支援の「勝手連」を立ち上げる始末。もしクリントン氏が逆転勝利したら、どうするのだろう。次期米政権を敵に回さないか……。まあ、いいか。

 ただ、まだ2人は小差で、勝負は夏の民主党全国大会まで持ち込まれそうだ。全国大会までもつれ込めば、1968年以来という。

 ベトナム戦争の最中だった68年は、米国が大きく揺らいだ年だった。4月には公民権運動の指導者、キング牧師が暗殺される。ベトナム戦争の泥沼に足をとられたジョンソン民主党政権に反旗を翻す形で、同じ党からロバート・ケネディ上院議員が大統領選に名乗りを上げ、現職のジョンソン大統領は再出馬を辞退した。しかし、6月にはケネディもまた暗殺される。有力な候補者が消えた民主党は、かつてない混迷に陥る。

 この年のシカゴでの民主党大会には、全米から反戦運動家が押しかけ、会場を包囲した。騒然たる雰囲気の中で、警官隊が出動。徹底的な鎮圧に乗り出す。当時のニュースフィルムは、警官がデモ隊に催涙ガスと警棒を振るい、次々と逮捕していく姿を記録している。女性の逮捕者が、公民権運動のシンボルだった歌「We shall overcome(勝利を我等に)」を口ずさみながら、護送車に押し込まれていく映像は強烈だ。

 昨年日本でも公開された米映画「ボビー」は、ケネディが銃撃されたホテルを舞台にした群衆劇だが、実写フィルムを交え、血なまぐさい時代の雰囲気がよく再現されているようだ。団塊の世代の先輩記者は「涙なしには見られん」とのたまわっていた。

 それから40年。当時、米国があれほど割れたのは、一つは反戦、もう一つは人種問題が理由だった。反戦についていえば、行方が見えないイラク駐留はベトナム戦争そっくりの様相を呈している。しかしながら、人種問題についてはオバマ氏の善戦を見る限り、隔世の感がする。もちろん、新聞記者の悪い癖で「人間が40年で、そんなに賢くなるものかね!」と思わないでもない。現実には、まだまだ劣悪な環境に置かれている米国の黒人層がいる。オバマ大統領が簡単に実現しそうにないという気もする。

 でも、だからといって、理想を馬鹿にするのはいかがなものか。

 オバマ氏の選挙戦のキャッチフレーズは「Yes we can(私たちはできる)」だ。キング牧師の有名な演説の一節「I have a dream(私には夢がある)」を思い起こす。肌の色で区別せず、人間の中身で判断する。本当にそんな「夢」が実現しようとしている時代が今、到来しようとしているなら、人類の進歩に対する信頼が取り戻せるかもしれない。

 まっすぐでなくとも、ゆっくりであっても、世の中は必ず前進していく。そう信じたい。

LinkIcon橋下はん、性根見せなはれ(08.3.5)

LinkIcon芭蕉は隠密だった?(08.2.14)

引継帳の余白~全国紙デスクの日々 記事リスト

2008年

国際会議(08.8.12)
第3次石油危機(08.6.20)
成長の限界(08.6.13)
顔(08.4.22)
2人の首相(08.4.14)
石原都知事の責任(08.4.1)
花粉症と肥料(08.3.13)
橋下はん、性根見せなはれ(08.3.5)
私には夢がある(08.2.25)
芭蕉は隠密だった?(08.2.14)
中国の闇(08.2.7)
取り付け騒ぎの記憶(08.1.25)
デカ部屋(08.1.15)
政治家の病気(08.1.1)

足腰は弱り体力も落ちたけど相変わらず青臭いこと言っている。そんなオヤジ記者の日常報告。考えるきっかけを提供できれば。 [全国紙デスク]

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