PressRoom.jpプレスルーム引継帳の余白080422

引継帳の余白~全国紙デスクの日々

08.4.22

 紆余曲折の末、日本銀行総裁に白川方明氏が決まった。大学教授→副総裁→総裁代行→総裁と「三段跳び」の結果、まさかの総裁就任である。総裁ポストを弄んだ与野党について書きたいことは色々あるが、それは別の機会に譲り、新総裁の「顔」を論じたいと思う。
えっ? どういう意味だって? いや、比喩ではなくて、文字通りの顔です。

 最初に断っておくと、私は、伝え聞く白川さんの人柄にたいへん好感を持っている。金融記者の間では、「のび太くん」というあだ名で通っていたそうな。ほのぼのした風貌といい、寝癖の付いた髪で人前に出てくる気取りのなさといい、これまでの日銀総裁とは異質である。4月11日のワシントンでの主要7ヵ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)では、記念写真の際、各国代表の中で一人だけ首からIDカードをぶら下げ、目立っていたし。

 まあ、裏返すと、あまり重みがないような気もする。金融政策に関しては福井俊彦・前総裁に劣らぬ見識を持つそうだから、顔で損するタイプなのだろう。

 政界や経済界でも、顔の造作はともかく、容貌が立派な人の方が得をするようだ。日本で初めて政党内閣を組織した原敬は、歴史教科書の写真を見ると、白髪で渋い中年紳士風である。同時代の人も「原が貧相だったら、あそこまで政治家として大成しなかっただろう」と書き残している。現代の政治家を見渡しても、実力者といわれる人の多くは、迫力ある顔をしている。

 もっとも、正反対の例もあるところが、世の中の面白いところだ。

 太平洋戦争中、日本海軍に樋端(といばな)久利雄という参謀がいた。海軍兵学校、海軍大学をともに首席で卒業し、若い頃から天才的な頭脳の持ち主として嘱望され、日本海海戦の作戦立案で有名な秋山真之の再来とまでいわれた。ミッドウエー海戦の敗北後、連合艦隊の参謀についたが、昭和18年(1943年)、山本五十六司令長官とともに戦死した。樋端がミッドウエー海戦の作戦企画に参画していれば、海戦の展開は変わっていただろう、という人すらいる。

 ところが、この樋端参謀。なんとも冴えない風貌だったそうだ。海軍出身の故・源田実参議院議員は「風采は頗るあがらず、平生は口を半分ほど開いて馬鹿みたい見えた。この口を半分ほど開いて馬鹿みたいにしている時が、頭の最も冴えている時だというから驚く」と回想している。

 近年、「人は見た目が……」という題名の本がベストセラーになり、見た目の重要性を説く意見が多い。ある面では当てはまりそうだけど、「人は見かけによらぬもの」という不変の真理もある。

 意外と、白川さんは外柔内剛の人かもしれない。私は密かに、そうにらんでいる。

LinkIcon成長の限界(08.6.13)

LinkIcon2人の首相(08.4.14)

引継帳の余白~全国紙デスクの日々 記事リスト

2008年

国際会議(08.8.12)
第3次石油危機(08.6.20)
成長の限界(08.6.13)
顔(08.4.22)
2人の首相(08.4.14)
石原都知事の責任(08.4.1)
花粉症と肥料(08.3.13)
橋下はん、性根見せなはれ(08.3.5)
私には夢がある(08.2.25)
芭蕉は隠密だった?(08.2.14)
中国の闇(08.2.7)
取り付け騒ぎの記憶(08.1.25)
デカ部屋(08.1.15)
政治家の病気(08.1.1)

足腰は弱り体力も落ちたけど相変わらず青臭いこと言っている。そんなオヤジ記者の日常報告。考えるきっかけを提供できれば。 [全国紙デスク]

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