PressRoom.jpプレスルーム引継帳の余白080620

第3次石油危機

引継帳の余白~全国紙デスクの日々

08.6.20

 前回は食料高騰の話を書いたので、今回は石油高騰について書きたい。こちらもまた、先の見えない急上昇を続けている。石油価格の指標として、新聞などでよく目にするのは、WTI価格というものだ。「ウエスト・テキサス・インターミディエート」の略で、テキサス州などで産出する米国原油のこと。超軽質で硫黄分も低い。ただ、1日当たりの産出量は米国全体で消費される石油量の2%程度しかない。世界最大の商品先物市場であるニューヨーク・マーカンタイル取引所で売買され、数字を把握する便利さから、指標になっている。

 そのWTI価格が6月16日、1バレル(約159リットル)=139.89ドルの市場最高値をつけた。市場関係者は「150ドル突破は時間の問題」と見ている。1990年代は20ドル台だった。1年前と比べても、2倍に跳ね上がった。まあ、私が説明するまでもなく、国内でも店頭のガソリン価格はレギュラー1リットル=170円台になっているから、皆さんも高騰を身にしみて感じておられるでしょう。

 問題は、なぜ高騰しているのか、ということ。国際エネルギー機関(IEA)の見通しによると、世界の原油需要は、今年第2四半期で日量8610万バレル。供給は5月で8660万バレル。だいぶ逼迫しているとはいえ、供給の方が多いのは間違いない。素朴な市場原理からいうと、価格の急上昇はどうも解せない。

 特に6月16日の高値更新は、その前日、サウジアラビアが増産方針を明らかにした直後のこと。株式市場だって、想定を超えて高騰すると、「冷やし玉」と呼ぶ株式を売り出して相場を落ち着かせるのに、サウジの「冷やし玉」は効果がなかった。市場に「もっと上がるだろう」という期待があるのだろう。そこから「投機主犯説」が出てくる。

 ただ、「投機はけしからん」「ファンドを監視しろ」という議論も、あまりにも短絡的な気がする。そもそも、米国の景気の先行きが怪しくなり、金融緩和もあって、世界的に資金はだぶついている。また、中国やインドを始め新興国の成長で、エネルギーは必要になるとの読みがある。余裕資金があって、将来の期待分野があれば、カネが流れ込むのは自明のことだ。それを「投機」の一言で片づけてしまうと、事の本質は何も見えない。

 石油高騰を抑える王道は、化石燃料に代わる新エネルギーの開発に力を入れ、成長分野に育て上げ、そこに資金を呼び込むということしかない。ただ、それでトウモロコシを原料にしたバイオ燃料なんて話になると、今度は穀物価格に影響してくるわけで、新エネルギーもよく考えないといけないようだが……。

 英国のブラウン首相は、このところの原油高騰を「第3次石油危機」と命名したそうだ。だが、少なくとも日本では、1973年の第1次石油危機当時と比べ、世間の危機感が薄い気がする。物価上昇を考えると、あの当時のガソリン価格は現在の220~230円に相当するという。ビルやネオンの照明が消え、テレビの深夜放送も中止された。世の中がピリピリしていたことを思い起こす。その点、いまは別に車の通行量も減らないし、繁華街はまばゆいネオンがきらめいてる。

 「『危機』という漢字は、『危険』と『機会』という二つの意味からできている」。こう語ったのはケネディ元大統領だ。大いなる危険を感じないと、大いなる機会も生まれないのかも知れない。

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引継帳の余白~全国紙デスクの日々 記事リスト

2008年

国際会議(08.8.12)
第3次石油危機(08.6.20)
成長の限界(08.6.13)
顔(08.4.22)
2人の首相(08.4.14)
石原都知事の責任(08.4.1)
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取り付け騒ぎの記憶(08.1.25)
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政治家の病気(08.1.1)

足腰は弱り体力も落ちたけど相変わらず青臭いこと言っている。そんなオヤジ記者の日常報告。考えるきっかけを提供できれば。 [全国紙デスク]

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