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動画共有で盛り上がった2007年、そこに見える新たな萌芽

技術編集者のITニュース読解

08.1.7

 年末年始の休暇でこれといったIT系のニュースがほとんど流れていないため、まずは2007年のネット動向からスタートすることにしましょう。

Googleの年間検索ランキング、「ニコニコ動画」「初音ミク」がランクイン
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2007/12/19/17943.html

 12月19日にインプレスのネット関連ニュースサイト、Internet Watchに掲載されたGoogleの年間検索ランキングは興味深いものでした。同社のニュースリリースに上がっていないところをみると、特定のメディアにのみ公開されたもののようです。総合ランキングは、1位が「Yahoo」、2位が「YouTube」、3位が「mixi」、4位が「amazon」、5位が「2ch」で、6位が「ニコニコ動画」となっていますが、「ニコニコ動画」は初登場でみごとにトップテン入りの快挙を成し遂げました。

 2007年を振り返ってみると、1月にはニコニコ動画がベータテストを開始。6月にはYouTubeが日本語版サービスを開始、また11月には「MySpace」が日本語版のテストサービスを開始するなど、昨年は動画共有で大いに盛り上がった年となりました。

 さて、メイドインUSAのYouTubeとMySpace、そして純国産のニコニコ動画、どれも動画を共有するという点では同じなのですが、それぞれのサービスの特徴を見ると、ずいぶん違っていることに気がつきます。

 この3つのサービスの中で、いちばん最初に動画共有サービスを公式にスタートしたのはYouTubeで、2005年12月のことです。2006年の初めには音楽の情報を共有するコミュニティサイトMySpaceもmp3ファイル共有に加えて動画共有のサービスを提供開始しました。MySpaceは動画共有サービスを開始する前の2005年7月にメディア王ルパート・マードック氏が率いるニューズ・コーポレーションの傘下に入り、またYouTubeは2006年10月にグーグルのグループ会社となったことで、それぞれ財政的な基盤を確かなものにし、急速にユーザを増やしました。

 YouTubeは、サービスの開始時から動画ファイルの共有を目的としていたこともあって、サービスとしてはシンプルです。アップロードした動画に他の人がコメントをつけることができるので、SNSに分類されることもありますが、YouTubeの優れた点はJavaScriptをベースに作られていて、ブログなどに簡単に動画を貼り付けることができることと、同じようなテーマのお勧め動画「Related Videos 」がリストアップされる点にある、と自分は考えます。どのようなロジックでお勧めを選び出すのかは公開されていないのでわかりませんが、実際に利用してみるとついついこのお勧めにハマって時間が経つのを忘れてしまいます。また、幅広い分野の動画が登録されていることもあって、まずはYouTubeからといった地位を獲得しています。

 音楽が好きな人ならMySpaceをチェックするのは、もう常識と言えるまでになってきました。お気に入りのミュージシャンの新曲をチェックするなら、まずはMySpaceというわけです。会員には、「ユーザ」と「アーティスト」の2つがあり、「アーティスト」は自分の作品を公開することができます。サービスを開始した頃はアマチュアやインディーズの「アーティスト」がほとんどでしたが、最近ではビルボードのヒットチャートに登場するような有名ミュージシャンも登録していてプロフィールにMySpaceのURLをよく見かけるようになりました。

 音楽をプロモーションするならMySpaceからというのが、今や米国の音楽業界では常識と言うとちょっとオーバーですが、最近ではミュージシャンの他にも若手の映像作家などが利用するようになってきました。一方「ユーザ」に登録すると自分のページを持つことができ、プロフィールを公開したり、ブログを書いたり、フレンドを作ったり、興味のあるグループに参加したりできます。ルック&フィールは異なりますが、仕掛けとしては日本のmixiとよく似ているのがMySpaceです。

 昨年、日本のネットを何かと賑わしたニコニコ動画は、共有する動画の画面上に他のユーザがコメントできるという大胆な仕掛けが大当たりして、急速に利用者の数を増やしました。コメント非表示のボタンがあるので見たくない人は、もちろん消すことができます。このコメントですが、画面上の位置や表示するタイミング、おまけに色まで指定できるという充実ぶりで、人気の動画になると、本来の動画がコメントに消されてしまって、ほとんど見えないということもあります。

 ニコニコ動画の中でも昨年の秋以降に話題を独占したのが「初音ミク」でした。この初音ミクは、ヤマハのVocaloid2という音声合成技術を用いた、いわば“歌うシンセサイザー音源”で、サンプリングしたのはアニメで活躍している声優の藤田咲さん。専用のエディタで音程と長さなどに加えて発音させる文字を入力するとミクちゃんが歌ってくれます。例えば、シングル版CDによく入っているカラオケトラックにあわせてミクちゃんに歌わせたり、オリジナル曲を作曲してミクちゃんに歌わせたりすることができます。8月の終わりにこの初音ミクが発売されると予想外の売れ行きで、ニコニコ動画には曲の投稿が相次ぎ、昨年末で約1000タイトル。中には200万回以上再生された曲も見受けられるようになりました。

 ということで、動画ファイル共有と言っても、YouTube、MySpace、ニコニコ動画、それぞれ向かって行く方向は違っています。共通の課題としては、著作権問題を、今後どのようにして解決していくかでしょう。ここまでサービスが広がってしまうと、一部のファイルのせいで動画共有サービスのサイトをすべて止めてしまうこともできませんし、時代の流れは“リミックス”“マッシュアップ”といった複製をベースにした新たな創造へと向かっていることは否定できないでしょう。そのような点に注目すると、「初音ミク」ブームには新たな可能性の兆しを見ることができます。

 例えば、誰かが作曲してミクちゃんに歌わせると、他の誰かが新たなアレンジで歌わせたり、バックはそのまま使って違う歌詞で歌わせた新たな作品が登場します。また、ネットで知り合った人たちがコラボレートして作った作品も見受けられます。画像は、CGクリエイターの投稿を使わせてもらうといったことも頻繁にあります。ニコニコ動画の中では、著作権に縛られず、より深い意味での共有が成り立っているのです。この流れは、今後はニコニコ動画に留まらず、ネットの新たな文化として広まっていくのだろうと、自分は思います。

 思い起こせば、インターネットの広がりそのものが、OS「Linux」やウェブサーバー「Apache」、データベース「MySQL」、スクリプト言語「Perl」などのオープンな環境の下で急速に普及を遂げたように、今後は音楽や映像といったクリエイティブな分野での共有が、新しいスタイルの文化を創造していくのではないでしょうか。

 いよいよ年が改まって、1月。1月と言えばやはり気になるのは「CES」と「Macworld」の2つのイベントですね。「2008 International CES」は、7日から10日までラスベガスで、「Macworld Conference & Expo」は14日から18日までサンフランシスコで開催されます。さて、今年のサプライズは何なのでしょうか? 次回は、そのあたりを記事にしたいと考えています。

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IT関連ニュースの背景やそこに潜む狙い、今後の展開などをテクニカルエディター・ライターが専門家の目で読み解く。 [斉藤彰男]

斉藤彰男(出版社系ITニュースサイトテクニカルエディター・ライター、プログラマー)=元月刊誌編集者
 出版社系ITニュースサイトテクニカルエディター・ライターと同時に、日本語情報処理を得意とするプログラマー。インターネットの商用利用が始まった頃から雑誌「インターネットマガジン」やメールマガジン「Internet Watch」などの編集を手がけ、エンジニアとエディターの二足のわらじを履きつつ十数年。最近は、新たな分野への挑戦として省エネルギー関連の仕事に携わる
http://www.supercat.jp/

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