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経済面に載らない通信業界の動向

稼ぎたいなら新聞に頼るな!

08.5.19

 経済部の現役時代、もっともドラスティックな変化をとげたのは通信業界だった。なにしろ、PHSのモニターテストが霞ヶ関で行われていた時代だ。ポケベルから携帯電話への移行にはずみがつき、NTTドコモ、デジタルホン、ツーカーなどが、今から思えば牧歌的な新規顧客獲得競争を繰り広げていた。そう、なにしろその時代は携帯電話などの個人通信機器を「持てる者」より「持たざる者」の方が圧倒的に多かった。白紙のマーケットが広がっていたのだ。iモードの登場、事業者の買収や統合によるブランド変更、そしてナンバーポータビリティの実現を経て、いまや1億2098万台の携帯電話(と、460万台のPHS)が日本全国津々浦々に行き渡っている(TCA調べ、08年4月実績)。

 未開の市場は成熟したマーケットになり、世の中は携帯電話がなければ夜も日もあけなくなった。筆者も先日、家族と待ち合わせに失敗して深刻な冷戦を引き起こしたばかりだが、15年前なら「どこで何時」と正確に確認しあった待ち合わせ場所も、いまや「近くまで来たら電話して落ち合おう」方式に変化、決まっていない場所など確認しようもない。その結果、携帯電話を忘れたり紛失したり、ましてや充電切れしようものなら、社会から排斥されかねない勢いだ。ちなみに冷戦の原因は私の携帯電話「不携帯」にあった。

 ところで、最近の携帯電話市場はソフトバンクの「ホワイト学割」がヒットの兆しをみせ、すかさずドコモ、auが追随しているように、いよいよ学生、低年齢のユーザー開拓に本格的に着手した、と見ていい。なんといっても半端な大学生やティーンエージャーと違い、小学生、中学生は親が携帯電話使用料を支払うから取りはぐれがないし、早いうちから顧客を囲い込むことは経営戦略にもプラスだし、マーチャンダイジングにもかなう。各社デコメのバージョンを取りそろえたり、親にアピールするためにインターネットのフィルター機能を充実させたりとなかなか細かい配慮を見せている。

 しかし、この市場拡大戦略には大きな障害がある。つい先日、政府の教育再生懇談会は小中学生の携帯電話使用制限の法整備をすすめる方向で一致した。保護者にはなるべくもたせないよう促す一方で、所持に際しては機能など大幅な法規制をかける方針だという。子供や高校生が携帯電話のいわゆる「有害サイト」にからむ事件や事故に巻き込まれるケースが増えていることを受けた発想だろう。

 このニュースは残念ながら経済面には載らない。携帯電話事業者は総務省(旧郵政省)、携帯端末メーカーは経産省、そして教育再生懇は文科省の管轄で、社会部の記者が取材を担当するからだ。投資家は(当たり前のことだが)経済面だけ読んでいても世の中の先の流れが読めないし、ニュースの背景に何があるのかを知らなければ予測は当たらない。

 この法律がもしも本当に作られれば、その結果は事業者のみならず株主にも影響が生じる。いやそれ以前に、事業者やメーカーはこうした世論の流れに歯止めをかけるべく、さまざまなコストをつぎ込んで対策を講じなければならない(その「コスト」には、たとえば議員たちへの働きかけや、省庁間の調整のための費用も含まれる「かも」知れない)。小中学生の市場にアプローチをつづけた場合のディール(もうけ)と差し引きした場合、ペイするのかどうかはそれぞれの事業者の判断だが、どちらにしてもコストは当初予測していたものよりずっと大きな金額になるだろう。

 ちなみに、小学生の携帯・PHS保有率は31%、中学生は57%(内閣府調べ)。この数字をどう見るかも事業者によって違うのだろうが、筆者がみるところ、これほど普及している小中学生の携帯電話保持に制限をかけようと発想する文科省が、一番世の中のことを知らないということだけは確かだ。筆者は、法整備は骨抜きになり、「文科省が満足するような子供向け携帯の開発コストを吸収できた業者」の一人勝ちではなく、「大人向けの携帯と同じく家族コンシャスな料金プランと子供向けキャラクターで人気を集めた」業者が勝利、というシナリオが現時点ではベストだと予想する。
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 これから時々、経済ネタを中心にコラムを書きます。読者のみなさん、よろしくお願いします。(東京在住、全国紙・元経済部女性記者、40代)

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2008年

中台急接近で損をするのは?(08.7.8)
経済面に載らない通信業界の動向(08.5.19)

取材中に知った有名経済人の素顔、経済界の常識と非常識、ヘンな会見、儲け話のウラを淡々と暴露。 [元全国紙・経済部女性記者]

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