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中台急接近で損をするのは?

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08.7.8

 中国と台湾を結ぶ直行チャーター航空便の運用が7月4日始まった。当面は週末の4日間、中国側が北京など5空港、台湾側が台北・松山など8空港で合計36往復となるが、日中貿易関係者や東アジアウォッチャーらは「今後の定期便化に向けた地ならし」(日系金融機関エコノミスト)と見ており、中台関係の大きな変革への第一歩とする分析が多くみられる。

 なにしろ、春節など、祝日にからめた臨時チャーター便はともかく、恒常的なチャーター便の就航は1949年の"中台分裂"後初めて。中国からの台湾観光も事実上解禁され、査証(ビザ)手続き事務所の相互設置も検討されているなど、中台関係の最大のネックだった「人的交流」に事実上ゴーサインが出たと見える。

もともと、中台の経済依存は政治的状況に関わりなく高く、すでに現時点で10万社近い台湾企業が中国国内に進出し、中国在住の台湾人ビジネスマンは100万人以上もいると言われる。台湾経済省によれば、2007年の対中貿易額は約1023億ドル(30.1%)、対中投資額は約100億ドルと、いずれも過去最高を記録している。

 このタイミングでの急接近の背景にあるのは、5月に発足した台湾の馬英九政権(国民党)の強固な意志。「中台交流の拡大による経済振興」を錦の御旗に、6月、9年ぶりに再開させた第一回目の対話で、いきなりチャーター便運航のほか、台湾海峡での共同油田開発などで合意した。

 ただ、これまでとは正反対の「中国寄り」外交を推し進める台湾政府の姿勢に、周辺の関係国は戸惑いを隠せない。なにより、この急激な中台関係の緊密化に振り回されそうなのは香港だ。

 これまで直接対話が途絶えていた中台の経済的な交流基地として潤ってきた香港だが、直接交流によって失われる利益はなんと166億香港ドル(約2200億円)にものぼるとされている(米シティバンク試算)。主に空、海における中台直行便の定期化による旅客、貨物量の減少によるものだが、香港では「台湾の金融機関による中国進出に対しても警戒感を強めている」(台湾政府関係者)という。すでに中台当局では、中国国内の銀行に対する台湾側の資本参加を検討しているとのことで、香港にとっては今後の展開次第では東アジア経済圏における存在価値を大きく下げかねない。警戒するのももっともだ。

 一方で、中台接近の要因は「台湾の政治情勢だけではない」と話すのが在日欧州系銀行関係者。昨年来影響が続いている米のサブプライムローン問題は「台湾企業のみならず、中国の国家的対外投資政策にも大きな影響を与えた。しかも鈍化を続ける米経済に対し、ブッシュ政権は無策。ドル建てで対外資産を維持する恐ろしさは、日本を除く各国政府が思い知ったはず。この状況のなかで中国、台湾が経済依存率を高めようと接近することはなんら不思議ではない」(同)との見立てだ。中国への盛んな投資意欲を見せていた米国投資銀行なども、今後の投資計画を再度検討するなど、状況の把握にやっきだという。

 確かに、馬英九氏の掲げる「国民の生活水準向上」のためには、遠い米国より近くの中国、しかも市場の潜在的パワーを考えれば中国経済にシフトチェンジすることが最も現実的ともいえる。一方でこの接近は(表面上はどう見えようとも)政治的問題に波及することなく、あくまで経済的局面にとどまるという見方も根強い。中国側も、政治的意向はともかく、2010年の上海万博後は急速に失速すると見られている国内経済を少しでも浮揚させる効果があるなら、台湾側の政治的意図には当面目をつぶる程度の余裕を見せておく、ということらしい。

 一方、一般市民や他国にとって、予想を上回る中台の急接近には、素朴だが本能的な戸惑いの声が上がっている。野党の民主進歩党(民進党)からは「安全保障面で問題がある」(同党幹部)との通り一遍の反論が出たきりだが、台湾の市民は「政権交代で接近が急に進んだ。共産化することは望んでいないのに」と、本音がちらり。反中勢力が根強く残る台北地域や、香港に法人を設けている有力企業関係者は「(直接交流によって)香港経由のメリットを失う意味があるのか」と強く反発しているのも現実だ。

 ところで、中台両国と経済的な関係の深い日本はどうかというと、1ヵ月を経て恐ろしいほどの無反応。しかし、これは状況を見定めた上での選択ではなく、悲しいことにキナ臭い状況では思考停止、という「戦後60年続いている経済界の悪癖がまた顔を出しているにすぎない」(中国ウォッチャー)のだという。政治的状況が少しでも関わる場面では、とにかく何もせずおとなしくお上が示す方針に従うのが一番、という消極的思考ともいえるが、肝心の現政府は「中国寄りの外交無策集団」(外務省OB)が牛耳っていることを考えると、今回の中台接近で東アジア経済圏の味方を失う日本が最も損失を被るはめになる可能性が強いことを指摘しておきたい。

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取材中に知った有名経済人の素顔、経済界の常識と非常識、ヘンな会見、儲け話のウラを淡々と暴露。 [元全国紙・経済部女性記者]

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