[健康=メタボの行き着く先](14)インスリン注射がスタート

血糖値は350前後で安定してしまい、体は終始だるい状態になって、教育入院の甲斐がなかった自分に、医者は「インスリン注射をしましょう」と告げました。

それまでもインスリン注射は勧められていたのですが、今でも注射が大嫌いな自分にとって、食事の度に注射するのは悪夢でしかありません。そのため、とにかく拒み続けていました。

しかし、体がだるく、もう待ったなし、という事態になってしまいました。

ちなみにインスリンは膵臓(すいぞう)から分泌されるホルモンの一種で、血糖値を下げる役割を果たしています。糖尿病というのは、血液中に過剰な糖があふれている状態が続く病気です。当然、膵臓は糖を処理してエネルギーに変えようとどんどんインスリンを分泌するのですが、あまりの糖の多さに膵臓が壊れ、分泌量が減少したり、効き目が落ちたりします。

インスリンは糖をエネルギーに変える役割も担っていて、筋肉へもエネルギーを供給しています。その活動ができなくなると、体は当然だるく、力が入らない感覚になります。

余った糖は頻尿でも排出されているのですが、一度ダメになった膵臓は元に戻りません。人間の体に備わっている重要な機能を失うわけで、それをインスリン注射で補うということです。

家に帰って妻に「インスリン注射することになったよ」と告げると、さすがの妻も動揺していました。

「それって、一生しなくちゃいけないの?」「膵臓は治らないからねえ」との答えにさすがに焦ったようです。

そのころは自分も射ち始めたら一生続くと思っていました。しかし、最近では血糖値をコントロールして下げることができれば、必ずしも射ち続けなくていいことが分かってきました。

しかし、当時の自分にそれはできませんでした。いま、仮にタイムマシンであの当時に戻ったとしても、やはり自堕落で刹那的な爆食を選ぶでしょう。

ということで、今度はインスリン注射をマスターするための教育入院です。あの8人部屋に帰ってきてしまいました。

入院にあたって、最初にインスリン注射の方法を教わります。まず血糖値を計測して記録。次に消毒カット綿で腹を拭き、インスリン注射器に注射針をセットして決められた量までダイヤルを回してセットし、腹に針を刺してボタンを押して注射します。

インスリンの注射針は細く、刺してもあまり痛くないように配慮されているのですが、方向によっては「チクッ」とした痛みを感じます。このころの針は現在のものより長く、抜き差しで痛みを感じることも少なくありませんでした。

この入院では食事も糖尿食で、そのうえで医師が指定したインスリン量を注射します。2週間の期間で適正なインスリン量を見極める意味もありますが、低血糖で身体が危険な状態になった時でもすぐに対処できる、という面も実は大きいのです。

血糖値が低いところに過剰なインスリンを注射すると、こんどは糖が足りなくなるのです。ひどいときは失神することもあります。

低血糖については次回、解説します。(U)=雑誌・ウェブ編集者、50歳代後半

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