[健康=メタボの行き着く先](33)大動脈解離は死に至ることもある病状

有名人では古くは石原裕次郎さん、そして加藤茶さんに大木凡人さん、笑福亭鶴瓶さんも苦しみ、大杉漣さん、大滝詠一さん、声優の鶴ひろみさん、2016年2月には大阪・梅田で運転手が車を暴走させて死亡事故に至った大動脈解離。特に急性の場合は即死につながる場合もある恐ろしい病気なのです。

自分が発症したのは、もちろん急性の大動脈解離。これ以前に心臓に関連した病気を医師から告げられたことはありませんでした。ただし、メタボリックシンドロームや糖尿病では「このままにしておくと、心臓や血管、末梢神経などにも影響が出ることがあるので気を付けてくださいね」と、必ずくぎを刺されます。しかし、特に何の症状もないうちは、そんなアドバイスは「自分には無関係だろ、ほんの少しの運が悪い奴だけ貧乏クジを引くのさ」とばかりに聞き流します。

しかし、高血圧と糖尿病で血管内にあふれているドロドロの糖は、今この瞬間も確実に血管を痛め付けています。高血圧だけでも心臓と血管にはダメージを与え、時に血管の内膜を壊してしまいます。ここに糖でドロドロの血液が流れると、壊れた内膜に血液が固まって血管が詰まる場合もあります。これがひどくなると「動脈瘤(りゅう)」という危険なこぶができ上がり、破裂すると大変なことになります。

もう1つ、肥満気味で血液検査で「中性脂肪」「コレステロール値」が高い人、既に高脂血症を指摘されている人はさらにリスクが高くなります。「動脈硬化」という、血管の内膜が厚くって石灰化してしまう「アテローム性動脈硬化」を全身の血管に発症しがちです。血管が石灰化すると、X線検査やCT(コンピューター断層撮影)で血管が白い影となって写ります。柔らかく柔軟性のある血管が、ガチガチに石化してしまったからです。

この動脈硬化も、やはり動脈の内側に隆起ができてしまい、そこがボトルネックとなって血圧が流れにくくなり、心臓はそれを補おうとさらに圧力を高めて高血圧が悪化します。また、急に立ち上がると血管の柔軟性が失われているため、血管が収縮しないので血液が一気に下半身へと流れて血圧が下がりになり、起立性低血圧を起こすこともあります。もし1つでも思い当たる症状があれば人間ドックで徹底検査をお勧めします。

●高圧で流れるドロドロの血液が血管の壁を裂く●

さて、そんな血管に糖でドロドロの血液が24時間耐えることなく流れていると、隆起を起点に詰まってしまうことがあります。糖尿病患者で高脂血症の自分の場合は、フル稼働で血管と心臓にダメージを与え続けていたわけです。この頃、血圧は上が200mmHg前後が普通で、150mmHgくらいだと「今日は少ないな」と思っていましたが、150mmHgは高血圧症のレベルです。

血管の内膜と書いてますが、血管の壁は3層に分かれていて、最も内側が内膜です。大動脈解離は、心臓から出て行く太い大動脈の内膜が裂け、真ん中にある中層に血液が流れ込み、どんどん剥離が進む症状です。

普通なら血管が剥離したときは胸にとんでもない痛みを感じることになります。中には肩甲骨に痛みを感じ、時に失神するほど痛いともいいます。しかし、自分の場合は「いててててて!」程度でした。痛みは大動脈乖離の進行に合わせてどんどん強くなる一方なのが、この病状の特徴です。自分の場合も同様に痛みが増していったので、内膜が裂けてから時間を追うにつれて、その裂け具合が大きくなったのでしょう。診察所ではその状態で3時間も待たされたのですから、下手をするとその場で危篤状態になっていたかもしれません。

大動脈。乖離の起こる場所が1、2、3は死亡リスクも高く、要手術の可能性大(図版:AoDissekt_scheme_StanfordB.png by JHeuser.)

この図を見ると分かるのですが、大動脈は心臓から出て弓状に心臓を囲みながら体の上方と下方へと伸びています。人間の血管の中でいちばん太く、心臓エコーなどで出口の経を計測しているのを聴いていると、40~50mmもあります。

即死につながりやすいのは、心臓から出てすぐ近くの場所で血管が剥離を超えて破裂してしまう場合です。この時心臓はあふれ出る大量の血液によって圧迫され、心臓を包む膜の中でドックンドックンできなくなって心停止してしまうのです。これを「心タンポナーゼ」と呼びます。何らかの原因で心臓で出血があると、最終的にこれが死因になることが多く、15分程度で死に至ります。

また、血管が完全に裂けたり、完全に動脈がふさがると体に血液が行き届かなる「虚血」という症状となり、臓器や体組織が危険にさらされます。この状態が続けば、臓器不全が次々と起こって死亡することもあり、やはり、緊急の処置が必要になります。

血管が心臓に近い場所で剥離・破裂した場合は、すぐさま手術になります。血圧を下げる降下剤を注入しつつ、破れた血管部分に人工血管のステントを挿入して流れを確保します。もし、血があふれて心臓が圧迫されている場合は、血液を吸い出します。万一、病院に来た時点で虚血が始まっていて腎臓が危ういのであれば、処置と並行で人工透析の準備を進めて臓器の負担を和らげ、毒素を抜いていきます。

もし脳に向かう上方大動脈で乖離が起これば、脳にダメージが残ることもあり得ます。その場合は、後遺症としてまひなどが考えられます。脳は全身を回る血液量の20%を必要とする食いしん坊な臓器なのです。

●大動脈解離は治療しなければ2週間以内にほぼ死亡●

この大動脈解離、もし痛みを我慢することができて治療しないと、約80%が2週間以内に死亡します。治療すれば、70~90%以上の人が無事に退院できるということなので、決して痛みを我慢しないでください。おそらく、我慢すること自体が無理だと思いますが。運が悪い場合はICU(集中治療室)に運ばれて2、3時間で死亡することもあります。これは搬送の遅れや乖離が起こった場所がより心臓に近い場合です。

自分の場合は、最もリスクが低い腹部あたりでの乖離で、その後、乖離が進行せずに止まっていました。X線でめくれている内膜を見せられましたが、それはもう見事に反り返っていました。「あなたの場合は、本当に運が良くて乖離も進んでいないので、このままにして経過を観察しますが、当面は病院でおとなしくしていてください」と、ドクターは言います。めくれてるのに大丈夫かよ!? と思いながらも「はあ……」と答えるしかありませんでした。

ちなみに、大動脈解離を起こした患者はその後、血圧を下げるための投薬と努力が必須となります。最初の2週間が要観察期間ですが、これを乗り越えて退院しても体内に爆弾を抱えているようなもので、5年生存率は60%、10年は40%です。自分は10年生存をクリアしたところで、その後もX線で見てもらったことがありますが、相変わらず剥離して反り返っておりました。

今も時おり、胸にチクッと痛みを感じる時があるのですが、だいたいはすぐ収まります。とはいえ「ついに最後の時が来たか!?」と考えてしまいます。心臓を中心に妙な痛みがあり、その痛みが時間を追って増していき、背中の痛みがすご過ぎて悶絶するほどになると、一刻も早く救急車を呼んだ方がいいでしょう。

幸い、大動脈解離の場合は病状がはっきりしているので、救急車の中でバイタルチェックとヒアリングから、この病気を疑って適切な病院へ向かってくれるはずです。一刻を争う事態であることはモニタリングから明らかなはずなので、あとは救急車の中で時間切れにならないよう、早めに助けを求めることです。

そんな訳で、ICUから2週間ほどは病室で大人しくし、たまに病院のすぐ前の酒屋でつまみとタバコを買ったりして、のんびり過ごしました。あ、ちなみに血管系の病気ではタバコもリスク要因の1つなので、たぶん、やめたほうがいいです。なぜかというと、急激に血管の収縮を招くからなのです。酒も同様ですね。

と言いつつ、この原稿はタバコをふかしながら書いているんですけどね。ただし、自分の場合は相当運が良かったケースなので、心臓により近い場所で乖離を起こすケースも少ないことは覚えておいてください。(U)=雑誌・ウェブ編集者、50歳代後半

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