[健康=メタボの行き着く先](49)人工透析の怖い話~突然、意識不明に~

人工透析は、血液を体外に出して人工腎臓でろ過する療法です。実に不自然なことをやっているわけで、透析中はその日の体調や除水量(人工腎臓を通して体内から余分な水分が排出される総量)などから体に負担がかかり、血圧が上下に激しく変動します。2型糖尿病からの慢性腎不全患者の場合、高血圧はたいていデフォルトです。平常時の上は150以上が普通で、200を超えることも珍しくありません。

この血圧ですが、体重の増加に比例して上昇します。透析患者は強制的に1分当たり250mLの勢いで動脈から血液を体外に吸い出し、ろ過回路を通して体内に戻します。この人工的に生み出される血液の流れで全身の血管の収縮性が失われてしまう、とドクターに聞きました。動脈硬化も進みやすいので、急に立つと下半身の血管が収縮せず、血液が下半身にどっと流れてフラフラする起立性貧血を発症することもあるのです。

透析中は基本的に寝ていますが、上半身を起こしてパソコンをいじったり弁当を食べたりすることも自由です。この時は上半身だけなので、貧血にはなりにくいのですが、ゆっくり介助を受けて起き上がります。

●寝ているだけで血圧が急上昇・急降下●

問題は寝ているだけなのに血圧が急上昇したり急下降する時です。30分の間に上の血圧が50以上変化することもあります。数値にもよりますが、寝ていると意外にこれが何も感じません。特に透析前の血圧が190以上だと、透析を始めてしばらくすると150くらいに落ち着いてきたりします。

実は、血圧が普段から高い透析患者は、除水をしきれないで体内が水余り状態になっていることが多いのです。心臓も水分を含んで比率が大きくなっていることは月1回のレントゲン検査でバッチリばれてしまいます。また、肺も余分な水がたまるので、透析中はせき込んでばかり。しかも、えげつないせきをします。悪くすると肺炎や肺水腫などになることもあり、通常生活も息苦しいはずです。

自分も田舎のクリニックに移ってから、体重がなかなか落ちなかったので「体もでかいし、透析効率も考えて4時間から4時間半にしよう。あとQB(血液流量)も350mLに上げようか」と言われて、しぶしぶそうなりました。ちなみにこのQB値は、そのクリニックでは最高値だそうです。外国人は500mLとかも珍しくないそうですが。

さて、このQB 350で透析するわけですが、除水量は当時、毎回5~6kg。最大で6.5を引いたことがあります。透析を受けている方なら眉をひそめるか、狂ってると思う数値です。これがすんなり引ける時もあるのですが、時には最後の1時間で血圧が急降下するときもあります。体調は特に悪くなかったのに、なぜか突然、おかしくなるのです。いろいろ考えてみるのですが、いまだに共通性が見つかりません。

●終了30分を切ったあたりで冷や汗が出て気絶●

ある日、終了まで30分を切ったところで、薄ぼんやりしてきて「あ、いつものように眠くなったのかな」と思ったのですが、どうも冷や汗が出てきます。「別にトイレに行きたくないのに変だなあ」と考えていたら気絶してました。悪い癖が出て、限界を見極めようと我慢してしまったのでした。

その後、いつも見慣れている天井のパイプが降ろされて、呼吸マスクを装着され、指には酸素濃度を測る機械がはめられていました。看護師長と看護師さんが集まって大騒ぎになっています。「酸素濃度が上がってきたよ!大丈夫?」。「うーん………。なんか視野がもやってます」

さらに除水し過ぎだろうとのことで、食塩水注入などあらゆる手段が取られます。血圧を上げるため、足も上に上げられていました。これは、血圧が下がり気味の時、真っ先に取られる方法で、なかなか効果があります。末端まで血液を送っている心臓の負担を少なくでき、血も上半身に戻ってきます。

もちろん、この非常事態では除水は止め、QBも250まで下げているか、止めて穿刺(せんし)をまだ抜かず、いつでも食塩水か生理食塩水を入れられるようにします。そんなこんなで意識がハッキリしてきて、息苦しさも無くなってきたら、回路を外して止血します。いつもは自分で押さえるのですが、この日はバンドで止めてしまいました。

血圧も酸素濃度も戻っていますが、問題は立って歩けるか、です。しかも透析室は2階にあります。自分の体格を支えられるスタッフもいません。恐る恐る立ってみると、大丈夫そうでした。とはいえ、階段が急なので、そこはさすがにビビりました。透析終わりには、毎回のように上が70を切ってしまう人もいますし、高過ぎて帰れない人もいます。が、さすがに酸素マスク導入まで至ることはそうそうありません。

自分はこのあとも、途中でトイレで離脱、血圧が急降下して立てなくなり、スタッフ2人がかりでベットに戻ったこともあります。透析は毎回同じようなルーチンを繰り返すのですが、時折、このようなトラップに落ちることもあるのです。意識が戻らなければ、救急車で病院行きです。それがいつ来るかは、まったく予想できません。(U)=雑誌・ウェブ編集者、50歳代後半

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