[健康=メタボの行き着く先](39)人生初の人工透析、終了後は自力で立てない!

2008年の1月早々、自分は緊急手術で鎖骨からパイプが2本突き出た状態で入院となりました。明けて翌日、入院棟で人工透析となりました。もちろん、人生初の体験です。まだ歩行を禁じられているので、車椅子で押されて透析室に入りました。ベッドに横になります。

透析器は上の写真です(これは後に別の透析クリニックで撮影)。パイプが入り組んでいますが、これを「回路」と呼びます。透析器の向かって左側についている縦長の筒が、血液濾過を担う「ダイアライザー」で、透析を始めると右の写真のように血液で赤くなります。そこは、透析室というより、透析器のある物置のような部屋でした。中にはまだ若い男性と女性の技師が1人ずつ。

人工透析は透析器からパイプをつなぐだけなので、すぐにスタートしました。血液が片方のパイプから吸い出されたかと思うと、すぐにもう1本のパイプから戻ってきます。けがなどで流血して血が体外に出ると、血液は凝結してしまいます。しかし、透析時は血液が固まらないように凝結を防止する「ヘパリン」を使っているので大丈夫です。固まりができたら、即梗塞や不全につながり、血圧も急上昇することになります。血管が詰まってしまうためです。

●透析は3時間半、若手技師の無駄話にイライラ●

「透析ってどのくらいの時間やるんですか」と聞くと「今日は初めてだし、3時間半が目標です」

えっ。3時間半もかかるんですか! 先に言ってくれれば何か本を借りたのに。この透析室には本もテレビもラジオもありませんし、技師も美容室のようになにか雑誌などを出してくれるわけではありません。参ったな、3時間半か。さっき起きたばかりで寝られるかな……。無理でした。

なぜかと言うと、若い男女の技師がずっと無駄話をしているからです。患者がいるんだぞ、少しは黙ってられねえのか、クソ野郎、と怒鳴りたくなりました。くだらない愚痴の合間に「あー、早く帰りたい」を連発するからです。主に酒焼け声の女性技師の方はこればかり。じゃあ何か、俺がここで透析してるから帰れないと? そんなんだったら医療従事者になる資格はないからとっととやめろ! 苦情を絶対に病院に言うぞ、と3時間半のあいだずっとイライラしていました。

もう1つ、透析中は開始時と1時間ごと、血を戻したあとに血圧をチェックするのですが、血圧計のバンドは二の腕に巻くタイプ。これをされたままなので、とてもうっとうしいのです。そうして、何とか長い3時間半を無事に終えることができました。看護師さんが迎えに来て透析室から出してくれるのですが、ベッドから移る際によろよろして自力で歩けません。

体外に血液を出して洗浄するという行為は、予想以上に体に負担をかけるようです。何せ1分あたり200mL程度の血液がパイプから吸い出されていくのです。頭痛もあり、これが続くのかと思うと怖い気もしました。

●透析後はフラフラでも体調は回復●

ところがです。何度か同じ病棟で透析を繰り返しているうち、体調が良くなっていることを実感しました。透析後は歩けないし頭痛もあるのですが、しばらく休むと腹も減ってきます。そして、長年悩まされてきた肩こりがなくなり、トレードマークだった目の下の隈も消えてしまったのです。

自分の場合、透析は尿毒症状が出ていたので、老廃物などの毒素が身体の中にたまる一方でした。しかし透析で腎臓の働きを透析器が代わりにしてくれたことで、毒素が浄化されていったというわけです。この頃のSNSで、回復後の日記には次のように記していました。

「入院は勧められていたので嫌な予感はしたけど一度帰れると思ったんだが、そのまま入院。即座に鎖骨から大静脈へカテーテル挿入!げっそり 透析! スッキリ! うまい! なんじゃこりゃああ。体の外でフィルタリングされる俺の血液……。こされている時も戻る時も何も感じない。血液に神経も心もないのね……、と痛感。これで晴れて機械の体……じゃなくて新造人間? 調子が戻ってきたら考え方も前向きになってきた」

●血液検査の結果で毒素の抜けがハッキリ●

ではどれほど毒素が抜けたのか、この頃の血液検査結果が残っているので、実際に比べてみましょう。写真上が透析導入前、下が透析導入後です。導入後の結果は、透析前と後に血液を採取して効率を調べられるよう、並んでいます。

前回も掲載した透析導入前、尿毒症直前の血液検査結果
こちらが透析導入後の血液検査結果

透析導入後は多くの数値が下がっているのが分かるかと思います。特に「CK(筋肉中に含まれる酵素)」、「尿素窒素」「クレアチニン」「尿酸」値の低下は毒素が抜けている証拠で、体調の回復もこれが大きいかと思います。CKの低下は筋肉ダメージの解消を示しているので、肩こりの消失はこれも一因かもしれません。

そして、1週間ほど経ったところで、自分は病棟にある「大透析室」での透析をするよう、言い渡されました。そこは、これまで見たことのない光景でした。(U)=雑誌・ウェブ編集者、50歳代後半

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