[健康=メタボの行き着く先](40)目の前に広がっていたのは透析患者の山だった

今回はいつもと違って私的なコメントから入ります。今も人工透析を続けている自分は小便がほんの1滴ほどしか出ません。汗もろくに出ません。老廃物が抜けていかないため、透析で抜けない水分を引くわけです。これを除水といいます。

水分をいくらとっても抜けるのなら問題ないのでは? と思うかもしれませんが、1時間に1L体重が減るんですよ。10Lの水が余っているとして。それを4時間で引くとすれば、1時間に体重が2.5L落ちることになります。脱水状態ですね(笑)。そのため透析患者は体重管理が厳しいのですが、詳細は改めて説明します。

テレビをつければ新型コロナウイルス、雑誌もコロナ、インターネットの話題もコロナだとさすがに鬱(うつ)な気分になります。というわけで、このところ精神が不安定なので、缶チューハイの「檸檬堂(れもんどう)9%」の250mmLをついつい2本空けてしまうようになってしまいました。ということで、この2週間ほどは5.7L引いても3kgオーバーでフィニッシュです。せっかくやせてきたのに台なしです。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出制限もあり、ついつい家で料理を作って食べ、テイクアウトして食べして太ってしまったという知人もいますが、気をつけないとメタボ一直線になります。

既にメタボと診断されていたり、糖尿病の人などは、人工透析患者にならないよう、この連載をいま一度1回目から読み直していただければ、と思います。新型コロナウイルスに感染して死ぬより、現状ではメタボ関連で亡くなる死確率の方がはるかに高いことをお忘れなく。

さて、人生初めての透析を鎖骨から出ている2本のパイプで済ませていたのですが、その後、シャント増設手術をして、右手首の一部を切開、局所麻酔で何やらされているうち、1時間もたたずに人工的な太い血管にするための施術が終了しました。具体的には、下の図のイメージですが、人によって血管の位置が微妙に異なるので、手首から肘の間の血管を太くするイメージです。

シャントと、そこに挿す回路のイメージ
(C)Radiocephalic fistula

シャントは1分間に缶ジュース1本分の血液を体外に出し、ろ過して戻すために必要な太い血管です。この一連を専門用語で「バキュラーアクセス」と呼びますが、このネーミングにも機械人間感が漂っています。

このシャントはすぐに利用できるわけではなく、うまく育って太くなりドクドク血液が流れるようになるかをしばらく経過観察しないといけません。なので、ドクターの回診時にシャント部分を触られ「うん、育ってきてるね」と、朝顔の観察日記のようなことを言われるタスクが入院生活に加わりました。

道路をへだてた透析室へバスで移動●

そして透析開始から1週間ほどたったところで「今日から病棟のほうの透析室で透析になります」と告げられ、どこから湧いてきたんだというくらい多くの患者さんたちとバスに乗り込みます。向かう先は幹線道路を挟んだ向かいの病棟です。そこには通院用の大透析室があるのです。まだ透析後はフラフラでとても歩けなかったので、バスでの送迎はありがたい限りです。

普通の人なら「歩いていけばいいじゃん」「資源の無駄」「甘やかしすぎ」「透析やってるからって偉そうだ」とか批判の声が飛んできそうですが、あなたも今すぐ透析やってみなさいな。終了後はまず立てません。

透析室は、ベッドと透析器がズラリと並ぶ壮観な眺めでした。区分けが一切ないので見渡す限りベッドで、野戦病院のようです。そこにいる患者は老人がメーンです。実は、高齢者は糖尿病を発症しやすかったり、腎臓が弱ってしまいがちなため、これまでは人工透析患者の大半は高齢者でした。患者の年齢構成が、光景の「なんだこれ」感を余計に漂わせるのです。

透析室がそういう状況なので、以後の透析人生で自分は「まだ若いんだから」と言われ続けることになります。ちなみに透析導入時、透析患者の余命はだいたい5年でした。「ああ、自分は人工透析で無理やり生きてるけど、結局その程度で死ぬのか。無駄だなあ」と思ったものです。自分は子供の頃から希死念慮(死にたいと願う状態)が強く、即死で苦しまないなら今すぐ殺してほしいという願望を常に抱いています。生きているのがとにかく面倒くさいのです。いいこともないし、金もない。

そんなマイナス思考だから……と引き寄せの法則(いいことを考えればいいこと、悪いことを考えれば悪いことを引き寄せる法則)を語る人もいますが、前向きで買った宝くじは人生をいい方向に確実に変えてくれるはずなのに当たりません。なので信じません。

大透析室には看護師さんと、透析器、患者に回路の針を挿す技師さん、そして全体責任者のドクターがいます。午前中は入院棟の患者と通院で透析する患者で大混雑です。看護師さんや技師さんは、例の病院の学校の生徒も入っているので、やはりおしゃべりがうるさかったのでした。

患者の透析はだいたい同じくらいの時間に始め、ほとんどの人がほぼ同じ時間に終わります。最初に体重を計測してからベッドに向かい、問診があって除水する量を決めます。あとは、回路で患者と透析器を接続して透析スタートです。このときに血圧も測ります。

その後は備え付けのテレビを見たり読書したり爆睡したりと、暴れたり人の迷惑にならなければ自由です。途中、1時間ごとに血圧を計測して低い数値が出るとちょっとした騒ぎになります。ナースコールもあります。何となく圧倒されて終わってしまったのですが、驚いたのは通院患者のかなりヨボヨボそうなおじいさんが冗談を飛ばしながら自力でスタスタ歩いているのです。

これにはまだ車椅子が必要な状態だった自分は目を疑いました。「慣れると歩けるのか、っていうか、みんな普通に歩いてる!」。衝撃的な光景でした。(U)=雑誌・ウェブ編集者、50歳代後半

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