[健康=メタボの行き着く先](45)人工透析中の患者は完全に無力

人工透析中は、シャント(血液が本来通るべき血管と別のルートを流れる状態)のある右腕(だいたいは利き腕と逆側)には2本の穿刺(せんし)針から人工透析器へのパイプがつながっています。寝返りは打てますが、体や腕でパイプを押しつぶすと血流が止まってしまうので、腕にテープでパイプが固定されます。

途中でトイレに行きたくなることもまれにあるのですが、この時はまず血圧を計測します。実は、透析中は血圧が結構な勢いで上下するのです。そして、血圧が下がり過ぎると気持ち悪くなって吐いたり、便意が襲ってきたりします。この場合は、除水を止めて足を上げて血圧を上昇させると便意が消えます。まあ、軽い仮死状態体験ができるというわけです。

血圧に問題がない時は急いで回路をつなぎ直し、体の外に出ている血液の流れを遮断せずに循環させたままパイプをつないで固定します。その状態でトイレに向かうのです。

この処置にはそこそこ時間がかかるので、本当に危険な時は早めにナースコールを押して技師さんを呼ばないといけません。しかも、トイレの前後には体重計に乗って体重を量らなくてはいけないのです。これは、排出した便の量を確認して、その後の除水量を調整するためなのですが、こちらは緊急状態なのでドキドキです。

このように、透析中の患者は誰かに処置をしてもらわないと自由に動くことができません。そんな中、突然の雷雨で透析中にクリニックが入る建物全体が停電したことがありました。当時の記録からその時の様子を引用しましょう。

◇当時の記録からの引用◇

透析中にドカン! 衝撃と落雷。瞬時に停電。が、非常電源で透析室の電気は回復。それでも全ての透析器がストップしてアラートが一斉に鳴り始めて「ピコピコ」大合唱。

同時に、ビルの非常放送が……
「2階で火事が発生しました。落ち着いて避難してください」
できません……、あせあせ どうやら落雷で誤作動した模様で放送は爆音のサイレンも混じって、それが延々続く……
管理会社が来ないと切れないそうだ。
2階はファミレス「デニーズ」なのだが、クリニックの人が見てきたら爆音の中でお客さんは黙々とメシを食っていたそうな。

透析器は通常の透析中でも血液が凝固したり管が曲がって詰まると止まってアラートが鳴り、技師の人がすぐに確認して作動させる。
オレの透析器も1回停電のストップから解除して回し直したがいつのまにか止まっていて血が真っ黒。ひー。

◇引用ここまで◇

透析クリニックは、こうした非常時に備えて給水と非常電源を備えている所がほとんどです。しかし、この時の停電は“重症”で非常用電源も危なかったようです。ご存知のように、血液は固まると黒く凝結しますからね。さすがにビビりました。

この頃は透析後も頭痛が残ることも多く、まともに仕事にならず、日中も休んでいることが少なくなかったことが記録から分かりました。現在もそうですが、透析後は特に仕事になりません。

●透析を始めると前のような速さで歩けない●

前回書いた障害者年金は活路を見い出せず、事実上あきらめました。本当は透析で仕事を休んでいる分を補いたかったのですが。そんな中で、知人の紹介で新規クライアントの広告仕事案件が入りました。軽く先方の編集部で打ち合わせして、そのまま、広告主のビルまで歩いていくことになりました。

しかし、透析をするようになってから以前のような速さでは歩けません。担当さんには何となく切られては嫌だなという意識から透析をしていることは黙っていました。しかし、この担当さんが異常な早足なのです。ついて行くだけで息があがります。最初は進んでは待ってくれていたのですが、最後は後ろも見ずにスタスタ行ってしまいました。

そのせいでしょうか、原稿は合格点をもらって評価されたのですが、その後の発注はありませんでした。そうなるなら、透析してますと言えばよかったな、と思いましたが、後の祭りです。そんなわけで都内の住居兼事務所を撤退して、実家に移ることを決定しました。(U)=雑誌・ウェブ編集者、50歳代後半

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