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[健康=メタボの行き着く先](65)透析クリニック院長の予言「このままだとあと2、3年で……」
前回は逆流性食道炎という、メタボリックの人がかかりやすい条件を思い切り満たしている病気を紹介しました。メタボから人工透析に至り、糖尿病も高血圧もメタボも継続中の自分はというと、これはもう人間病気爆弾のようなものです。
だったら、せめて食生活を改善するとか、運動して痩せるなどすればいいのでは? と思う人も多いでしょう。しかし、メタボの人なら分かるはずですが、そんなこたあしたくなく、ただただ自分を甘やかしてダラダラしているのが大好き。別にいつ死んでも構わないもんね、どうせ人間、いつか死ぬんだし、という思考なのです。
たとえ人工透析になるまで悪化したとしても、透析を続けていると意外と健康に過ごせるので、生活の改善などあまり考えなくなります。とはいえ、水分を取り過ぎて除水しきれないほど体重がオーバーしてしまうと体がパンパンにむくんでくるので、そこはギリギリ引ける程度までセーブしています。
が、透析中の自分の両隣の患者さんは、ともに毎回3kg以上を引ききれずに残す体重過多というなかなかのツワモノです。1人は心臓が肥大し過ぎて脈拍は時々140で暴走、肺に水がたまっていてせきが止まりません。
もう1人は食事メニューを写真に撮って過体重を治そうと指導を受けていたのですが、結局、いまだに改善していません。この人は透析中に血圧の上が220を記録するのが当たり前なのですが、あまり除水できずに3kgあたりで足がつってしまいます。
その2人に挟まれた自分は最高で6.5L、今は多い日で5.5L除水できるので、そこそこ無理がききます。体重が生涯最高記録を毎回叩き出していた2013年ころ、回診時に院長がデータを見ながらこう言いました。
「このままだと、あと2、3年のうちに脳梗塞とか心不全になるかもしれないよ」
それで死ねるなら本望です。待ってました、という症状ですが、脳梗塞の場合は死なずに体が動かなくなる場合もあるので、それはちょっと嫌ですね。できれば一発、心不全で死亡が望ましいところです。
その頃のデータはリンの値が高く、明らかに食べ過ぎ。高脂血症も高血圧も“絶好調”で、透析終わりの血圧が190で、180以下に下がるまで帰れなかった頃です。水分も過剰で、レントゲン写真から「心臓が水で大きくなってるよ」と指摘されるのも毎度のことでした。だからといって胸が苦しいこともないし、特に歩きもしないので問題ありません。
2016年になって高血圧はやや収まりましたが、食生活はあまり変わらず、心胸比(肺の幅に対する心臓の幅の割合)も50%以上でした。仕事は朝から晩まで自宅でデスク前に座ったまま。通勤も運動もしていません。今も、ですが毎日の歩数は30歩程度ではないでしょうか。
自分の仕事部屋は2階にあるのですが、1階に降りる時右足に痛みを感じるようになってきました。あまり歩かないせいか、自分はいつの間にか足にあざができていたりするので、そのせいかな、と思っていました。最初は、しばらく放っておけば自然に治るだろうと思っていたのですが、2週間たっても痛みが改善しません。そこで仕事の合間を見て、日曜日にかかりつけの整骨院で診てもらうことにしました。症状を話していた時、先生は言いました。
「ちょっと待って。右と左で顔の表情が違うよ。これ、もしかすると脳梗塞かもしれないから、いますぐ病院に行きましょう! 今日やってるところ調べるから」
何せ外に出ないし、出る時はコンビニかファミレス、あとは透析程度なので、ぶっさいくな自分の顔をまじまじと鏡で見ることはありません。洗顔の時は見えますが、基本、ぶすっとしているので、表情の違いに気付くことがないのです。
足の不調が脳梗塞のせいだとすれば、この2週間、自分も含めて誰も異常に気が付いていなかったことになります。それとも急に悪化したのでしょうか。とりあえず、自分が乗ってきた車で休日でも急患を受け付けてくれる病院に向かいました。
病院では顔の表情が違うことと右足がおかしいことから、すぐに血栓を溶かす薬の点滴が開始され、それから脳のスキャンが始まりました。また集中治療室(ICU)かよ……。病院に来るといつもここだな、とあくまでのんきな自分でした。ICUは基本されるがままなので、そんなことを考えている余裕がありました。特に、今回は痛みも何もないので、とにかく無理することなくじっとしているしかなかったのでした。(U)=雑誌・ウェブ編集者、50歳代後半