[健康=メタボの行き着く先](18)インスリンのある生活

前回は延々と糖尿病食の恨みを書き連ねてしまいましたが、それほど、食の差別は糖尿病患者にとってつらいものなのです。食べ物だけでなく、酒やジュースもカロリーがあり、糖分の塊ですから控えなければいけません。

生活習慣で病気になったわけで、長年染みついた生活習慣を急に変えるのは難しいのです。インスリンを導入しても通院は続きますが、血糖値のコントロールが悪いと医者に小言を言われ、食生活の記録を命じられたりします。それが嫌になって「てやんでえ! やってられっか」と通院をやめてしまう人も少なくありません。

また、高血圧・糖尿病・インスリン使用での薬代は1ヵ月で3万円ほどに跳ね上がりました。医療費の負担は家計を直撃します。この病気の怖いところは、多くの場合、薬をやめられるまで体質を改善することが難しく、薬に頼って症状を一生抑え続けることにあります。

中にはストイックに努力して糖尿病を“完治”した人を2人ほど知っていますが、とても自分にはまねできない徹底した食制限と、過剰なウォーキングのたまものです。

薬代がかさむ中、仕事は相変わらず忙しかったので、なんとか家計を維持することはできました。確定申告で10万円を優に超える薬代を控除で処理しました。といって、戻りは少ないのですが。

●外出時もインスリンを携帯して食事前に注射●

さて、インスリンを食事前に注射するようになると、外出時も持ち歩くようになります。インスリンは血糖値測定キットの入るミニポーチの中に針と一緒に仕舞えるようになっているので、バッグの中に放り込み、外食前に打ちます。

ファミレスで血糖値測定キットとインスリン・針を自分の前に広げて、注射するわけですが、針をセットして少しだけ「チュー」とインスリンを空打ちしていると「あの人、覚醒剤やってるんじゃ」と通報されるのではないか、と最初は緊張しました。

全く事情を知らない相手には「すいません、ちょっとインスリンを打つので」とひと言断るか、面倒な場合はトイレの中で済ませてきます。トイレは衛生面からお勧めできませんが……。

同席した人の反応はそれぞれですが、意外と「ああ、うちのじいちゃんも打ってる」「おじさんが糖尿病で」という肯定的なケースが多かったように思います。それほど、糖尿病はポピュラーな病気になっているということです。

最初のうちは、外出時もしっかりインスリンを打っていたのですが、それも回数を重ねると面倒になってきます。血糖値を計測、注射、片付ける、という一連の作業がとにかく面倒なのです。

そのうち、外出時は打たなくなり、家に戻ってから服薬と同時にインスリンというパターンになっていきました。家での粗食の反動から、外食ではもちろん、ガッツリとモリモリ食べているにも関わらず、です。

●妻は「海外旅行ができないから今後が不安」●

そんな中、妻がこんなことを言い出しました。

「なんだか、一緒にやっていけるか不安。だって、インスリンを打ってると海外旅行とかもできないんじゃないの?」(本当はそんなことはありません)

--えっ、旦那の体より海外旅行の心配してるわけ!? 何なの? 人の心持ってるの?

これまで言葉のDV(家庭内暴力)でさんざんな目にあって来た自分ですが、このひと言で妻の正体がはっきり見えました。糖尿病のさらなる悪化と、夫婦関係の修復不可能な溝の広がりが、いみじくもシンクロしてしまったのです。(U)=雑誌・ウェブ編集者、50歳代後半

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