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[健康=メタボの行き着く先](68)仕事は続けられるのか、キーボードタッチが怪しい
病院でのリハビリは続きます。検査や人工透析もあるので毎日、時間帯が違います。特に透析がある日はなかなかのバタバタぶりです。この病院には通院透析もできる施設が備わっていましたが、まだ新しい病院のせいか患者も少なく、自分が透析に入る時はほかに患者もおらず、ものすごく丁寧な熟女看護師さんに手厚くしてもらいました。ちょっとラグジュアリーな気分です。
最近は完全個室の透析クリニックもできてきているようですが、ここで自分は技師さん2人と看護師さん2人のスタッフが1人占めでき、ぜいたく透析を味わえました。いつもの透析クリニックでは、患者もスタッフも多いので何かとざわざわしていて、しゃべり声、調子が悪くなった時のブザー音、スタッフが話しかける声などが聞こえます。静かになる時間帯はたいてい誰かがいびきをかいています。これはこれで調子が悪くなったときにスタッフを呼びやすいのですが、たまにはぜいたくもいいものです。
そして、リハビリです。補助なしでライン上を歩ける距離は、少しずつ長くなっていきます。バランス感覚が戻ってきたのと、体が揺れた時にうまく持ち直す方法が分かってきたせいもあります。とはいえ、スムーズな歩行にはまだほど遠いようです。リハビリでは、さらに日常の動作として、自分の仕事では不可欠なパソコンのキーボードの動作確認が始まりました。
リハビリ室にはノートパソコンがあり、それで適当な文章を打ち込んでいきます。自分はキーボードが変わっても前のキーボードと同じ感覚でキーをたたいてしまいがちで、ミスタッチが多くなる癖があります。加えて手が大きく指が太いせいか、もともとノートパソコンのキーボードは苦手です。指がキーからはみ出して隣のキーを打ってしまうのです。
しかし、脳梗塞で入院して久々にキーボード入力してみると、それを差し引いてもミスタッチが多く、打ってはバックスペースキーで取り消す回数が異常な多さでした。これは編集者としての商売に差し障ります。とはいえ、キーボード入力は何とかできるので、ゆっくりでも確実に打ち込んでいくしかありません。
ミスは多くても文章の作成はできました。仕事ではショートカットでコピー&ペーストも多用しますが、幸いその操作はダメージのなかった左手です。右手はエンターキーやバックスペース、数字キーも担いますが、キーボードの右側の文字列はやはり打ち損じが多くなってしまいます。これはもう慣れしかありません。毎日、リハビリの最後はキーボード入力で締めるようにして、少しずつカンを取り戻していきました。商売は続けられそうです。
ちなみにしゃべるのは問題ありませんでしたが、病室で1人でいるとそうそう話すこともなく、検査や診察の時に少し会話する程度。リハビリ室ではけっこう会話を交わすのですが、あまり不自由はなさそうでした。ただ、状態を説明しようとする特に時々単語が出てこないことがあったりして、年齢のせいなのか、脳へのダメージのせいなのかがはっきりしません。
実際の脳の機能はどうなっているのか、入院から2週間たった頃に、認知機能のテストがありました。引き算、ものの記憶、対象のジャンルに属する物の名前を言う、などです。この検査は透析クリニックでもやられたので、定番テストのようです。ネタバレしないよう、内容は明かさないでおきます。
検査は一応クリアして、記憶と思考に問題ないことも分かりましたが、焦って答えていると少し舌がもつれる感覚がありました。まだ右半身麻痺が残っているようです。とはいえ、人が聞き取れる程度のもつれしかないので、打ち合わせや取材などでは支障がなさそうです。
そして念のため、最後にもう一度、脳のスキャン。梗塞部分には拡大が見られなかったので、正式に退院日が決まりました。リハビリの最後は、自転車を運転できるか、でした。実際のところこれまで乗ることはほとんどなかったのですが、運動用にいいかな、と思ったのでした。問題なく乗りこなすことができました。しっかりペダルをこげ、右足の着地も問題ありません。ということで、自分で自動車を運転して退院しました。(U)=雑誌・ウェブ編集者、50歳代後半