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[健康=メタボの行き着く先](67)介護なしで真っすぐ歩けない! 脳梗塞リハビリの始まり
冬は、住宅内の居間と風呂場などとの温度の差によるヒートショックが脳梗塞の引き金になる場合があります。特に2021年1月は10年に一度という大寒波が日本を襲っています。雪害も尋常ではなく、雪かきをする時は水分を取るようにして脳梗塞を予防してください。
何しろ今は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う「緊急事態宣言」が出される都府県が増えている状態で、脳梗塞で倒れてもすぐに病院に運んでもらえるか怪しくなっています。医療崩壊というのは新型コロナの患者だけではなく、急を要する患者の受け入れや治療、手術ができなくなることも含んでいることをお忘れなく。メタボの中でも糖尿病や高血圧の方は特に気を付けてください。
さて、脳梗塞で入院を余儀なくされた自分でしたが、集中治療室(ICU)を出るとさっそくリハビリの担当者が病室にやって来て、問診をしながらできること、できないことなどをチェックしてリハビリメニューを作成してくれました。自分の人生の中できちんとしたリハビリをするのは初めてのことです。
道具や設備がそろった専用のリハビリ室で毎日1時間のメニューをこなすことになりました。テレビのドラマやドキュメンタリーで見るような広い部屋で、中では数人の高齢者がリハビリメニューをこなしていました。
まずは軽く手足の可動部を確かめながら、ストレッチから入ります。そして両手を前に上げてグー・パーと握ったり開いたりします。脳梗塞のダメージがあると、どちらかの手が上がらなかったり、握れなかったりします。ここは問題なくクリアしました。できない場合は動かない部分を動かすトレーニングを繰り返すことになります。
編集という仕事柄、キーボードを打てないと死活問題なので、とりあえず動いたことでホッとしました。ところが……。足がどうもおかしいのです。引きずりながら歩けるわけですが、例えば座って両足を交互に上げると、右足に力が入らず半分ほどしかいきません。上げた状態を維持することもできません。
「これはもうドラムのバスドラ(ペダル)を踏めないのではないか」と趣味のバンドのドラムが叩けなくなることが心配になりました。とはいえ、人工透析が始まってからは仲間が皆忙しいこともあって活動休止中ではあったのですが。
決定的にショックだったのは、床に白いテープが貼られた1本線を踏みながら真っすぐ歩くことです。横にはリハビリ師さんが補助でついています。というのも、1本線に沿って足を交互に踏み出すと、1歩目でもうふらついて倒れてしまうからなのです。
これ、もしかすると健常者の人でもバランスの問題でふらつくかもしれません。たぶん、2本線の上ならもう少し簡単にできるでしょう。何度がこなせば体がバランスを取るようになるはずです。ところが自分は初日、リハビリ師さんにつかまらないと歩ききることができませんでした。何てことだ、介護がないとまともに歩けないだって?
20歳代の初めのころ、ある雑誌の編集部でアルバイトをしていたのですが、バイク乗りの編集長が事故で足が不自由になり、つえを使っていました。それを見て「うお、かっけー」と憧れたのですが、脳梗塞とバイク事故では格好良さが格段に違います。編集長はバイク事故、自分はメタボを放置したあげく。うわ、カッコ悪! 最悪です。
初日は、久々に足の筋肉を無理に動かしたせいか、筋肉痛になってしまうというさらに情けないおまけつきでリハビリを終えました。まずは介護なしでバランスよく歩けるようになることが目標です。とはいえ、足を引きずりながら歩くことはできるので、毎朝、病室から病院1階の売店まで新聞、コーヒーとミネラルウオーター、おやつを買いに通うのが日課になりました。ついでに、地下駐車場まで降りて、自分の車の中でタバコを一服します。
脳梗塞ではタバコはご法度ですが、これだけはやめられません。血管がキュッと収縮するのでよろしくないのですが、ニコチン中毒者にとってはどうなろうと関係ないのです。問題はタバコが切れないように本数を我慢することです。病院の目の前にはタバコを売っているコンビニがあるのですが、散歩は院内のみ。しかも、入院用のウエアを着ているので、コンビニに行くには勇気が入ります。パジャマで出歩くより恥ずかしいかもしれません。とりあえず、タバコはギリギリ、退院まで持ちました。(U)=雑誌・ウェブ編集者、50歳代後半